一般に、私立学校の教員は、教育の技が「腐る」ことが多い。理由は簡単で、競争がないからである。
私立学校の児童生徒学生は、競争の結果、ようやく入学できたから、まだ勉学への意欲が少しは残っている。月謝分の知識は得ようとするし、高校生ならば、然るべき大学へ行こうという目的がある。
問題は、私立学校の教員たちである。転勤のない立場に甘えて、十年一日、似たような授業でお茶を濁す。
迫力のない、知的興奮のない、腐った授業ばかりになる。なーに、授業が下手でも構わない。肝心の生徒たちは、自分から進んで勉強する連中である。
一方、公立中高の教員はそうはいかない。否応なしの転勤がある。生徒も玉石入り混じって、油断ができない連中だ。
高校教員は、授業や生徒指導で目立つような自己宣伝をしたり、先輩や教育事務所などに有力なコネがあったりすれば、国公立大学附属高校や、地域有数の進学校に転勤できる。有名校に転勤したところで、給料が増えるわけではないが、プライドは大いに満足させられる。仕事内容も、優秀な生徒の通う高校になればなるほど、楽チンになる。
有名進学校に転勤してしまうと、教員も苦労するなんて言うのは、そもそも、実力の足りない教員で、教員自身の教授力や基礎教養があればあるほど、対象の生徒の学力が高ければ高いほど、教えるのは、容易なのである。
さて、私立学校の教員であるが、生徒が優秀ならば、教員は安直であることは、公立と同じである。
しかし、私立の教員は極めて腐りやすい。実力のある教員が悠々とそれなりの授業をするならともかく、普通または普通以下の教員までが、楽に授業をしようとする。そういう気持ちがなくても、やがて、環境に流されて、漫然と授業をする。もともとが力不足の教員である。しかも、生徒は自分で学習する力のある連中である。腐らない方が不思議である。
私立学校は、考えものである。高校については、公立や国立大付属校の方が、失敗は少ないだろう。
では、大学はどうだろう。
大学は、進学選択の幅が広い。だからこそ難しい。
地方の公立進学高校の教員は、生徒を進学浪人させたくない。浪人生は、後々面倒である。仲間内でのプライドと、地域での学校の評判とを気にして、卒業生の進学先または落ちどころを、はっきりさせておきたい。学校の方針も、国公立大学に生徒全員を放り込みたい。
生徒の希望を優先するのではなく、教員の采配で、受験先を振り分ける。おかげで、地方の国公立大は、まんべんなく入学希望者が集まる。生徒も、目出度く、入学する。
しかし、子供自身の気持ちや将来への展望を、無視する形になる。
とはいえ、理系に行きたいのに、お前じゃ無理だ、遠く離れた公立大学の○学部なら入れそうだから、そこへ行け、なんて指導が、常時なされているわけではない。高校3年生と言えば、半ば大人である。
「うるさい、俺の好きな大学へ行くんだ」と、進学相談室で席を立つ者がいるかと思えば、いないのである。ほとんどの生徒は、「わかりました~よろしくお願いします」である。
みなさん、お利巧というか、小粒になってらっしゃいます。
話を戻すと、私立大学と国公立大学の、どちらを選択するべきだろうか。
これがそう簡単ではない。私立もいろいろ、国公立もいろいろ。数多く、全国に散らばっているので、親元を離れることを前提とすると、無数の選択肢がある。
最低4年間、成長期の貴重な時間を潰すのだから、進学先には慎重にならざるを得ないはずである。
しかし、マスコミにしょっちゅう出てくるような大学ならどこでもいいじゃないか、という考え方もある。むしろ、それがほとんどである。
例として、私学のW大でいえば、普通入試は学部によって難易度は高いところもある。古い私学という「名声」の惰性で、いわゆる有名大とされているから、受験者が多い。大学教職員の手抜きの実態を、一般人は気にも掛けていない。
こういうのを、やらずぶったくりと言う。新宿の古い不動産屋の主人は、ここの学生は留年するか中途退学するかのほうが自慢だ、と話していた。今は知らない。
学力があるとは、とても思えない芸人や運動選手が多く入っている。勉強意欲のほどは、言わずもがなである。
彼は大学は無理でしょう、高校1年の内容すらついていけないのに、という生徒も、一芸とやらで、入学して、卒業ができている。
どうも私立大学は不思議な制度である。
あれは金と引き替えに学士を振りだすところである。または、受験者に知名度さえあれば、学校の宣伝のために、無条件で入学させるところである。
と話すと、不機嫌になる人も多かろうが、その実、本人たちも実態は知っているのである。
しかし日本は、当然ながら社会である。社会は固定化した層の積み重ねである。これを崩すと具合が悪い。皆が不幸になる可能性がある。
ある程度の不幸な層は必要だが、その層がやたら増えると困る。革命が起こる。そうなると幸福な層と不幸な層が入れ替わる。やがて、また革命がおこり、幸不幸が入れ替わる。これが、人類の歴史である。
ともかく、もう何十年か何百年か、革命は起こってほしくない。
だから、たかが大学とはいえ、現在の状態は、多くの人にとって望ましいのである。
たまたま新宿戸塚のW大を例にしたが、他意はない。どこも同じことである。
〇 本を紹介する。図書館で読むといい。こういうゼミなら力がつくだろう。
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